プロデューサーズ








ストーリー

 1959年のニューヨーク。マックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)は、かつてブロードウェイの王様と謳われた大物の演劇プロデューサー。だが、その栄光は消え去り、いまの彼は、老婦人たちから小切手をせびりとって暮らしている。新作ミュージカルの『ファニー・ボーイ』も、初日=楽日という体たらくだ("Opening Night")。
 そんなマックスのオフィスに、ある日、会計士のレオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)が、帳簿を調べにやって来る。彼がマックスの帳簿の中に発見したのは、<出資者から金を集める→ショウがコケる→出資者に配当を払わなくてすむ→プロデューサーが儲かる>という、ショウ・ビジネスの摩訶不思議なカラクリだった。それを聞いて、バーコード頭に電球がともるマックス。200万ドルの出資金を募り、失敗確実のショウを上演すれば、丸ごと200万ドルが手に入るじゃないか! 久々の儲け話にすっかり勢いづいたマックスは、その世紀のたくらみにレオを荷担させようと口説きまくる。が、安心毛布の切れ端が手放せない小心者のレオは、「ショウが成功すれば詐欺罪で刑務所行きです」と言い張り、シッポを巻いて逃げ出してしまう("We Can Do It")。
 しかし、職場の会計事務所に戻ったレオは、思い直す。朝から晩まで他人の金を数えて過ごす自分の人生こそが、刑務所暮らしと呼べるのではないか、と。かくしてマックスの元に舞い戻ったレオは、子供のころから憧れていた演劇プロデューサーになる夢をかなえるべく、マックスとコンビを組むことを承諾する("I Wanna Be a Producer")。
 さっそく史上最低のショウの準備にとりかかるふたり。第一歩は、史上最低の脚本を探すことだったが、まもなくとんでもないお宝がみつかった。ナチス信奉者のドイツ移民、フランツ・リーブキン(ウィル・フェレル)の書いた『春の日のヒトラー』が、それだ。マックスとレオは、契約を結ぶため、フランツが鳩たちと暮らす下町のアパートへ。フランツに取り入るべくヒトラー総統お気に入りの歌を合唱し、総統の魂に忠誠の誓いをたてるという、ユダヤ人にとっての屈辱的な試練に耐えたあと、ようやく契約書へのサインをモノにする("Der Guten Tag Hop-Clop")。
 次のステップは、史上最低の演出家と見込んだロジャー・デ・ブリー(ゲイリー・ビーチ)を口説き落とすことだった。「ショウは楽しくなきゃ」をモットーにするロジャーと、アシスタントのカルメン(ロジャー・バート)は、脚本がマジすぎる(!)と言って断るが、「トニー賞が取れるかも」というマックスの甘い囁きにのせられて陥落。さっそく演出プランを語り出したロジャーの口から、ハードゲイなドイツ兵のダンスのアイデアが飛び出すのを聞いたマックスは、「大失敗間違いなし!」と、ほくそ笑むのだった("Keep It Gay")。
 マックスとレオがオフィスへ戻ったところに、スウェーデン娘のウーラ(ユマ・サーマン)が現れた。カースティング(キャスティング)にやって来たという彼女は、ふたりの前でセクシーな歌とダンスを披露("When You Got It, Flaunt It")。思わず下半身がスタンディング・オベイションしてしまったマックスは、『春の日のヒトラー』に彼女を出演させると約束。さらに、秘書/受付係として、ウーラを雇う。
 いよいよ資金集めにとりかかる時がやって来た。一張羅の赤いスーツに身を固め、愛に飢えた老婦人たちを口説いて200万ドルをかき集めるマックス("Along Came Bialy")。いっぽう、オフィスでウーラとふたりきりになったレオは、思いがけず彼女といいムードになる。ウーラの胸に顔をうずめ、愛のデュエットを踊った彼に、もはや安心毛布の切れ端は必要なかった("That Face")。
 ヒトラー役のオーディションの日。マックスとレオは、史上最低の俳優をキャスティングしようと会場に乗り込んで行くが、なかなかピッタリの俳優がみつからない。そんなふたりのかたわらからステージに躍り出て行ったのが、脚本家のフランツだった。役者たちに手本を示そうとした彼のパフォーマンスを見たマックスは、ついに自分たちのヒトラーをみつけたと大喜びする("Haben Sie Geh?rt Das Deutsche Band?")。
 そして迎えた『春の日のヒトラー』の初日。劇場前に集合したロジャーたちが、ショウビズ初心者のレオに、「幸運を」と言う代わりに「脚を折れ」と言うギョーカイの常識を説明していると、楽屋入りしようとしていたフランツが階段から転落し、本当に脚を折ってしまう("You Never Say Good Luck on Opening Night")。
 このままではショウが中止になり、200万ドルのネコババ計画もパァになる。あせったマックスは、全部のセリフを覚えているロジャーに、フランツの代役をつとめてくれと懇願。ショウは、どうにか開幕にこぎ着けた。
 マックスとレオが予想したとおり、ナチスを礼賛するミュージカルの内容は、観客をアゼンとさせるのに十分だった。1曲目が終わらないうちに、怒り出して席を立つ客が続出。それを見て、マックスとレオは、自分たちの狙いが間違っていなかったと確信する。が、彼らの至福の時はそこまでだった。ヒトラーに扮したロジャーが舞台に登場し、腰を振りながら歌い出したとたん、客たちは、これがヒトラーをギャグにしたコメディだと勝手に解釈。ショウはバカウケし、マックスとレオは大ピンチに陥ってしまう("Springtime for Hitler")。
 ショウが大ヒット確実だとわかり、オフィスから二重帳簿を持ち出して自首しようとするレオ。そうはさせじと帳簿を奪い返すマックス。そこへ、ヒトラーが笑い者になったことに激怒したフランツが乱入。銃をふりまわして暴れだしたから、さあたいへん。騒ぎを聞いて駆けつけた警官に二重帳簿を見られてしまったマックスは、その場で御用に。いっぽう、ドアの陰に隠れて逮捕を免れたレオは、愛するウーラの提案に従って、金庫の200万ドルを持ち逃げする。
 しばらくして、留置所にいるマックスのもとに一通の絵葉書が届く。それは、ウーラと一緒にブラジルのリオでバカンスを満喫中のレオからのものだった(*"You'll Find Your Happiness in Rio")。相棒と信じた男の裏切りに、傷つくマックス("Betrayed")。
 そんな彼の嘆きを聞き届けたかのように、マックスの裁判の日に、レオとウーラが戻ってきた。法廷で、マックスがどれだけかけがえのない友人であるかを証言するレオ。結局、彼とマックスは、仲良くシンシン刑務所へ送られることになった("'Til Him")。
 とはいえ、転んでもタダでは起きないのが、ブロードウェイのプロデューサーだ。シンシンでフランツと合流したマックスとレオは、受刑者から出資金を募り、ミュージカル『愛の囚人』を創作。その行為が、「服役中の凶悪犯に歓びと笑いをもたらした」として、恩赦を受けて釈放されることになる("Prisoners of Love")。
 かくしてブロードウェイに舞い戻ったふたり。いまや名コンビとなったマックスとレオは、『愛の囚人』を皮切りにヒット作を連発。そんな彼らの頭上で、ブロードウェイの灯は、いつまでも輝き続けるのだった(*"There's Nothing Like a Show on Broadway")。

*は映画のオリジナル曲。